
医療保険は大きく「公的医療保険」と「民間医療保険」の2つに区分され、全国民に加入が義務付けられている公的医療保険に対し、保険会社が販売する民間医療保険への加入は任意となっています。
民間医療保険の役割は、公的医療保険の保障だけではカバーしきれない金銭的な負担を補うことです。
ケガや病気などのリスクに十分に備えるには、民間の保険商品にも加入しておくことをおすすめします。
この記事では、民間医療保険の仕組みや一般的な保障内容、保険を選ぶときのポイントをご紹介します。
- 目次
医療保険とは?民間商品の目的や必要性

医療保険とは、ケガや病気により手術費・入院費といった医療費が必要になった場合に、その一部または全額が給付される保険です。
日本には国民皆保険制度があり、全ての国民が公的医療保険に加入して保険料を出し合い、互いを支え合う仕組みが構築されています。
日本の公的医療保険は保障が手厚いことから、健康保険や国民健康保険に加入していれば「民間の保険商品はいらない」「保険料を支払うのはもったいない」と考える方もいるでしょう。
しかし、公的医療保険だけでは自己負担額をゼロにできないうえ、先進医療の技術料や差額ベッド代、入院中の食事代といった保障対象外の出費が発生すると、経済的な負担が大きくのしかかるおそれがあります。
さらに、国民健康保険に加入する自営業・フリーランスの方は傷病手当金の給付がなく、ケガや病気で就労できない期間は収入がなくなってしまいます。
民間医療保険は、上記のような公的医療保険では補えない部分をカバーし、もう一段階保障を手厚くする保険といえます。
医療費に限らず、入院中の諸費用や収入減にも対応でき、受けられる治療法の選択肢を増やすことも可能です。
特に家計や貯蓄に不安がある方は、経済的な負担を軽減するための備えとして、公的医療保険だけでなく民間医療保険への加入も検討しましょう。
民間医療保険の仕組み

民間医療保険は自由度が高く、保障期間や給付日額、保障の種類などを個々の状況や希望に応じて設定できます。
ここでは、民間医療保険の仕組みをご紹介します。
定期型
定期型の医療保険とは、5年や10年など一定期間の保障に備える保険です。
若いうちは終身型より保険料が割安となりますが、更新時にはその時点の年齢で保険料が計算されるため、更新後は加入当初よりも高い保険料が設定されます。
ある一定期間だけ保障を手厚くしておきたい方、定期的に保険の見直しをしたい方に向いているタイプです。
終身型
終身型の医療保険とは、保険期間の更新がなく、保障が一生涯続く保険です。
若いうちは定期型よりも保険料が高くなりますが、保障が一生涯途切れない安心感を得られます。
また、終身型の保険料は加入時の金額から変わらないため、更新する度に保険料が上がる定期型に不安を感じる方は終身タイプが向いているでしょう。
日額保障
一般的な医療保険の多くは、入院日数に応じて受け取る給付金額が決まる「日額保障」が適用されています。
入院給付金は「入院給付金日額×入院日数」で算出され、契約時にあらかじめ入院日額(1日当たり5,000円、10,000円など)を決めておきます。
給付金額が高くなればその分保険料も上がるため、個々の状況を考慮しながら適切な金額を設定することが大切です。
給付金
医療保険で受け取れる給付金には以下のような種類があります。
- 入院給付金
- 手術給付金
- 通院給付金
- 先進医療給付金
- 特定疾病に関する給付金
- 女性疾病に関する給付金
- お祝い金
医療保険の主契約はケガや病気による入院・手術の保障であり、その他必要な保障は特約保障として付け加えることができます。
一般的な保障内容

医療保険の一般的な保障内容は、入院・手術・通院に関する保障です。
ここでは、それぞれの保障内容についてご紹介します。
入院保障
入院保障とは、ケガや病気の治療を目的とする入院を保障するものです。
入院給付金には入院日数に応じて給付金が支払われる「入院日額タイプ」、入院回数に応じて給付金が支払われる「一時金タイプ」の他、実際にかかった入院治療費に応じて給付金が支払われるタイプもあります。
手術給付金
手術給付金とは、ケガや病気の治療を目的とする手術を保障するものです。
手術給付金の金額は「1回につき○円」と一律で設定されているパターンと、手術内容によって給付倍率が決まるパターンがあります。
また、手術給付金の対象となる手術は、「公的医療保険に連動する約1,000種の手術」か「保険会社が指定する88種の手術」のどちらかに該当する手術です。
どちらが対象になるかは加入する保険商品によって異なります。
通院保障
通院保障とは、ケガや病気の治療を目的とする通院を保障するものです。
医療保険は入院・手術に関する保障が基本となっており、多くの保険会社は通院保障を特約として主契約に付けるか選べるようにしています。
通院保障の対象となる条件は保険会社によって異なりますが、入院前や退院後の通院に対して給付金が支払われるのが一般的です。
つまり、通院保障はケガや病気による入院を前提とした保障であり、入院を伴わない通院に対しては保障されません。
医療保険の選び方とおすすめポイント

医療保険にはさまざまな特約があり、自分にベストな保障内容をどう選んでいけばよいか悩む方も多いでしょう。
特約を付加すればその分保険料は高くなるため、個々の状況をよく考えて自分に必要な保障を選択することが大切です。
ここでは、医療保険の選び方とおすすめポイントをご紹介します。
保険料払込免除は付けるべき?
保険料払込免除とは、保険期間中に被保険者が特定疾病や身体障害、要介護などの状態になった場合に、それ以降の保険料の払込が免除されることです。
保険料払込免除の付加に関しては、療養中の収入減を貯蓄や福利厚生などで補えるかどうかが一つの判断ポイントとなるでしょう。
先進医療特約は契約すべき?
先進医療特約とは、厚生労働省が定める先進的な医療技術、いわゆる「先進医療」の技術料にかかる自己負担金を保障する特約です。
先進医療を受ける場合、診察や投薬といった通常の治療と共通する部分に関しては公的医療保険で保障されますが、技術料については全額自己負担となります。
保険料は月当たり数百円程度が一般的なため、治療の選択肢を増やしたい方はもちろん、万一の備えとして付けておくのもよいでしょう。
女性保険は加入すべき?
女性保険とは、乳がんや子宮がん、子宮筋腫といった女性特有の病気を保障する「女性専用の保険」です。
一般的な医療保険よりも女性特有の病気への保障が手厚くなっており、基本の保障額に上乗せして支給されます。
その分毎月の保険料は高くなるため、保障内容としっかり吟味したうえで加入するか決めることをおすすめします。
がん保険とどっちを優先すべき?
がん保険とは、その名の通り「がん」の保障に特化した保険です。
医療保険とがん保険のどちらを優先するかは個々の状況や考えにもよりますが、まずはがん以外の病気も広く保障してくれる医療保険への加入を優先した方がよいでしょう。
まとめ

保険会社が販売する民間医療保険は、加入義務のある公的医療保険では保障されない部分を補う保険です。
医療保険にはさまざまな特約があり、入院・手術に関する主契約に付け加えることで保障をさらに手厚くできます。
日本の公的医療制度は充実していますが、先進医療の技術料や差額ベッド代、入院中の食事代・雑費などは保障対象外です。
また、傷病手当金が支給されない自営業・フリーランスの方は治療期間中の収入がなくなり、金銭面においても日常生活に支障をきたすおそれがあります。
ケガや病気で生じる経済的なリスクへの備えとして、民間医療保険の加入をおすすめします。